shin'nosuke さんのアレグロモデラート

アレグロモデラート(Allegro moderato)は、速さを示す演奏記号で「穏やかに速く」

phpだの、IEの互換モードだの(暴走気味)

いま、IT業界では、クラウドという言葉が流行っている。

少なくとも、僕の知識を使えば、クラウドというのは、パラダイムであって、実体がないものである。5年に一度のコンピューティングパラダイムの転換において、ニューメディア、マルチメディア、ブロードバンド、ユビキタスに次ぐ、2010年からの5年間のキーワードになることは間違いないだろう。

さて、クラウドとは何か。具体性に欠くことを好まないオープン世代のひと(俺も)に、僕なりの理解を書いてみると、クラウドの具現は、

  • XMLをインターフェースにしたWebサービスによるビジネスロジックの公開
    と、
  • それらをWebベースのテクノロジ(HTMLや非同期通信ができるJavaScript=ようするにAjax)を使って活用すること

    のことである。

    要するに、Googleはホームページ屋さんなんでしょ?と言った、僕にとってたいせつな人々のひとりにもわかるように説明すると、これは、単なるASPであって、ASPというのは「お仕事に役立つソフトウェアをインターネットで提供すること」である。

    汎用的な業務アプリケーションを用意し、顧客ごとにカスタマイズできるようにしておけば、ITによる効率化は、比較的安価で行えるようになるから、ASPだけでなく、クラウドも例外なく、ソリューションないしは、ソフトウェアを作る人々のやることが減っていくということになる。不景気もそうだが、クラウドによるノンプログラミングの文化は、IT業界に、たいへんな緊張を与えている。

    とはいうものの、

    Webサービスを、Webベースのテクノロジで活用することの具体化は、非常に手間がかかるうえ、手間がかかるわりに、多数の優れた人々が作ったライブラリを使う必要があって、ライブラリの使い手は、Ajaxの根幹である、XMLHttpRequestの存在すら知らないという始末であって、まあ、それなら、エンジニアの単価が下がるのもしょうがないかのかなあとも思う。


    クラウドと、直接は関係ないが、Web至上の昨今、perlに始まった、サーバーサイドによる、動的ページの提供は、J2EEへ行き、Microsoftはそれを、スケーラビリティは劣るものの、.NETという言葉に変え、現在、多くの動的ページは、php というもので作られているだろう。

    一方のクライアントサイドでは、前述のAjaxのほかに、リッチクライアントというものも主流のひとつであるだろう。5年くらいまえ、リッチクライアントのことを「要するに、IEのうえで動く、Webアプリケーションのことですよね?」と聞き返したら、別にアプリケーションはプラットフォームにこだわらなくてもいいじゃないかといわんばかりに「リッチクライアントは、リッチクライアントです。」と、当時フリーだったエンジニアに言われたことを思い出す。リッチクライアントは、Adobe Flexとか、Biz/Browserであるが、たいがいは、オープンパラダイムのひとが、コードのめんどくささに耐え切れなかったり、政治的な問題があったりして、プロジェクトは噴火するに至るのが、なんだかねえ。

    ちかごろは、php やリッチクライアントを経歴書に書くと、非常に受けがよいらしい。リッチクライアントはともかくとして、果たして、php をわざわざ経歴書に書く必要があるのかねえ。

    イギリスの伯爵が学術研究成果を発表するためにNeXTで作ったWWWは、HTTPとURLとハイパーテキストとブラウザから構成されるということを理解しており、NCSAのアルバイトが画像や、クライアントサイドでのインタラクションを実現したことと、HTTPは、TCPのポート80に平文を送っているだけでで、SOAPも、XMLを平文で送受信しているだけであることを知っているエンジニアに、何をいまさら、php の案件のために、php の経験が必要なのだろうか。

    10年くらい前は、グローバルネットワークへの通信が、たったの56Kbitsくらいで、それでも、IENetscapeを追い越そうとするから、クライアントのパソコンにWebブラウザーをたくさん入れて、全部確認したんだよね。
    Netscapeが、キャッシュ有効のときに、formタグのレイアウトをさぼるとかさ、tableタグの終タグを入れないと、表組み自体を表示しないとかさ、とかいって、Communicatorはtableタグのレイアウトが遅いとかさ、tableのなかに、JavaScriptがあると動かないとかさ、いろんな制約があるなかで、がんばって作って、IEでも確認したりしたの。

    それでいて、IE8の互換モード。知ってる?
    IE8が、IE7とIE5のレンタリングをエミュレートするモードだってさ。
    リロードボタンのとなりのボタンを押せばいいらしいけど、これは、metaタグとか、doctypeとか、レスポンスヘッダーですらコントロールできるらしいね。

    なんだい、これ。


    昔はね。ないものは作るという文化だったの。
    だから、自然に、オペレーティングシステムの癖とか、あらゆる概念の本質を探ろうとしたの。だから、画面は、黒くって、そこに、若い情熱を注ぎ込んだの。

    みんなで、
    アラン・ケイ先生のダイナブックとか、
    現在のJavaのようなわかりやすい、構造化プログラミング言語を作り出したい

    と、夢見ていたわけ。

    Notesのように、会話によるコミュニケーションをオンライン上で持ち込めるソフトウェアを作り出したい

    と、していたわけ。


    いまは何だね。

    Google先生は何でも教えてくれて、Wikipediaでは一通りの知識が載っている。このことが、クラウドパラダイムが示す言葉のひとつであるが、携帯で、履歴書を書くために、書けない漢字を調べている、フリーターの女の子。それは、クラウドではなくて、ユビキタスだぞ。

    便利な世の中になったね。
     
     
     
     
    ※記事中、お見苦しい文章があったことをお詫びいたします。