ながさわさんのアレグロモデラート

アレグロモデラート(Allegro moderato)は、速さを示す演奏記号で「穏やかに速く」

理科系離れが進む中、技術者の名誉のために訴えた

漢字変換ワープロ発明、対価求め提訴 東芝の元技術者
http://www.asahi.com/national/update/1207/TKY200712070306.html

ふうん。
松下の、ジャストシステムを相手取ったアイコン訴訟に似た、平行的発見現象を自分のものであるとする、新しいものを生み出すためにはひとそろいの歴史を知ることが不可欠であるとわからず(むしろ、それを逆手にとって)自分は他人に影響されずにものごとを考えているから、自分が常に一番新しいという、最近の若者にありがちな誤解と同じような出来事だと思ったが、

>「日本は技術立国にもかかわらず技術者が軽んじられてきた。理科系離れが進む中、技術者の名誉のために訴えた」

その通りであるな。
僕が属するIT業界も同じ。膨大な基礎理論に基づき、主体的なコアエンジニアリングを行うことでニッポンの基幹システムを背負う人はたいてい、フリー、もしくは、アマチュアに近いひとである。そういう人たちはたいていpay が少ない。どういった人たちに大きなpay があるかというと、
・たいしたコンピュータリテラシーはないが、
・エンドユーザーに一番近い立場にいる会社の
・納期が守れ、一定の品質を確保することができて、
・大きな収益が確保できたプロジェクトの
・納期と品質と収益が確保できなかった場合の責任を問われる

人に、上から順にpay が大きい。

たいていのシステム/ソフトウェアエンジニアリングにおいては、その原価のほとんどが、エンジニアないしはプログラマの人件費であり、彼らにどんな圧倒的なスキルや、画期的な実装があったとしても、対価は代わるものではない。

ただ、テクニカルエンジニアリングにしろ、業務エンジニアリングにしろ、いずれかのディレクションにしろ、プロジェクトマネジメントにしろ、プロジェクトには必ずそれぞれの分野においてキーマンがいる。彼らは、賞賛され、キーマンでなかった人よりも多いpay を得るべきだ。

ニッポンのシステムエンジニアリングは、IBM360 が日本に上陸し、それに国策によって対抗した日立や富士通NECメインフレームの上で動く、基幹業務システムのエンジニアリングを発端とするため、技術は重んじられない。
また、70年代にそういったプラットフォーム(FortranCOBOLPL/I)で育ってきた人たちが、現在のIT業界のトップにいるがゆえに、やれWindows だの、Linux だの、.NETFrameworkだの、メインフレームと歴史を同じくするワークステーションの文化でさえも、知ったこっちゃない。その時期に、メインフレームのコアな部分を知る人間は、そうなることを知っていたかのように、細々と基幹系のプログラマに徹していたり、そうでない人に淘汰されたりしている。

文化が変わるのを待つか、このように訴訟を起こして世論に問うか、あとは、技術偏重だけではいけないことを理解して、プロジェクトマネジメントの両方を得て、トップを目指すかという方法があるが、技術偏重の人間が妥協できるとは到底思えないな。実際、僕もそうだ。ホビーコンピューティングを知り、コンピュータリテラシーが潤沢な、いわゆるファミコン世代が管理職の世代になったときに、この状況は変わっているかどうか。
それでも、フリーの人間がフレームワークを作り、アマチュアの世界が次の時代を作りだすことはしばらく変わらないだろうな。やはり、スキルの高いエンジニアは、高い月単価で稼いでいくに限るのである。サラリーマンでやることでは、きっとないだろう。